YAKINIKU YAZAWA Kyoto
京都の焼肉矢澤のホール家具、個室用建具など空間を特徴づける造作の製作を担当いたしました。
設計:GENETO
都の“粋”が作り出す“らしさ”
京都の四条烏丸を一本南に入った綾小路通りにできた焼肉店の計画である。東京を中心に、シンガポール・ミラノ・ビバリーヒルズと展開してきた「焼肉矢澤」の新店舗として京都が選ばれた。
施主から求められたのは“京都らしさ”だった。それを単に“和風”と解釈すると映画のセットのようで“らしさ”とは異なる。“らしさ“という趣や情緒にも似た印象を与えるための設計方法を考えたとき、地域に潜む土着的な工法や素材に着目することとした。
かつて建築やインテリアというものは地域毎の特徴を反映する存在で、土着性をもっていた。つまり、“らしさ“とは、工法や素材などのエレメントが集まり起こす現象のようなものであると考えた。そこで、京都に残る伝統産業を見直し、現代の空間の中に土着的なエレメントを取り入れる事を検討した。内部はいたってシンプルで効率的な空間構成であり、オープン席には視線の操作を行うために御簾を利用している。御簾の持つ透明性が、緩やかに席毎を文節している。広がりを求めるときは、御簾を巻き上げ視線が通ることで大きなワンルーム空間にもなる。個室の入口には葦戸を用い、店の空気感を共有しつつ、個室としての閉じられた状況も担保している。葦戸の取手には特注の引手が付いており、人が触れる部分にも“らしさ“を感じられる要素を取り入れた。
また、“京都らしさ“を語る上では、屋外空間も重要な存在である。
アプローチには、焼杉塀で路地のような空間を作り、壁面を折り曲げることで店舗入口までの奥行き感を出す。塀をくり抜いて作った小屋上の空間は、待合スペースとして東屋のような役割を果たす。北側の個室からは坪庭が見え、天井を船底天井とすることで、庭と室の一体感を強調している。トイレ前空間も一つの外と捉え、手水鉢を置いた。水の音がトイレ前空間を爽やかに演出する。
京都の土着的な工芸や空間の作法などを現代的なデザインや工法とミックスすることで、京都らしい現象が随所に起こる空間となっている。結果的に、“京都らしさ”という情緒を感じられるような空間体験に結びついたのではないかと考えている。